感想『スティスネス 内なる静けさ―静寂は成功のカギ―』 

先日、当カレッジのプロクラスメンバーである杉田真さんから新しい訳書をご恵投いただきました。訳書タイトルは『スティルネス 内なる静けさ ―静寂は成功のカギ―』(パンローリング株式会社)ですが、長いので以降「本書、同書」という記載にいたします。ご了承ください。本書はかなり厚みのある書籍ですが一晩で読破しました。以下は拝読しての感想です。書店で同書を見かけましたら、どうかお手にとってくださいますようお願いいたします。

さて、著者のホリディさんはメディア戦略家としてこれまで多くのビジネス書を出してきました。たとえば『苦境を好機に変える法則』『エゴを抑える技術』(パンローリング株式会社)などですが、本書を読むと心理学や哲学にいっそう軸足を移してきた感があります。

ここ数十年のビジネス書の動きを見ると、「どうやって儲けるか、成功するか、有名になるか、自己アピール、セルフブランディング……」に関連するタイトルが目立ちます。これらのキーワードを見ると、外から自分はどう見えるのか、どうすれば他人に自分が有能で信頼ある人間であると見せられるかがメインであったように思われます。 その究極が「バズり」ではないでしょうか。

「バズり」を狙って大げさなエセ動画が生成AIとの相乗効果でSNSはあっという間にディープフェイクの沼と化しています。このような毒だらけのSNSが目立つメディアのなかで、いまや正常な判断力を身につけ発揮するには無理が多くなってきました。こういう大きな、たいていは不要で自分を混乱させるような情報の渦の中で、落ち着いて考えられるにはどうすればいいのでしょうか。

温故知新。ホリディさんは本書の中で東西哲学を古代から追って紹介し、まず過去の知見を再度勉強して正しい知識を得ること、そして、余計なもので混乱した頭脳を冷やすためにも心を無にする状態を作り、自然のなかで肉体を解放することで自分が生きている人間であることを意識する……こういう行為を通して、「自分が何者で、本当に欲していることは何で、何に生きがいを感じているのか」を自覚してほしいと言いたいように思えます。

私自身を振り返っても、ホリディさんと似たようなことをしている気がします。ディープフェイクとハルシネーションだらけのSNSにはウンザリ。そのため、SNSなどの動画からは距離を置き、アナログ回帰を心がけています。スマホを置いて手で紙をさわる感覚を取り戻す、ペンをもって意識して文字を書く、頭を空っぽにして体を動かす、空や星を見つめて自然に対して感謝する……生きることはバズったり有名になることだけではなく、日々の中で自分の居場所を自覚して生かされていることへのありがたみを感じることかなと思います。これがスティルネスなのかなと。

ただし、スティルネスは決して隠遁する、世間をはかなむ、ニヒリズムを気取ることではありません。内なる自分を見つめて、フェイクをはらいのけ「事実」を知ることや、今後の社会の在り方や地球環境のことも冷静に考え把握して、自らの判断力と責任で行動することなのでしょう。煽られて動くのではなく。自分に自信を持ち、自分の考えと主張を見極め発言し行動できるために必要な力であると感じます。

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