独禁法に関する話題―物価上昇分値上げ交渉&クレジット言及交渉について

最近、SNSで見かけた事案2点について、まとめておきます。ご興味ある方はご覧ください。

1)「物価上昇分を発注側に値上げ交渉していいのか(大意)どうか」

この件についてはおおいに交渉して少なくとも固定費値上げ分については引き揚げてもらってください。根拠は公正取引委員会サイトの「よくある質問コーナー20」をご覧ください。

コスト上昇分を取引価格に反映しないのは優越的地位の濫用か。「価格交渉の場において明示的に協議することなく従来どおりの価格を据え置く」こと、および「相手方が価格上昇引き上げを求めたにもかかわらず、引き上げに応じない理由を回答なしで従来どおり価格据え置くこと」は独禁法上問題になるようです。

ポイントは「十分な協議があったかどうか」。遠慮なく交渉協議をなさってください。

2)「作品に自分の名前をクレジットしてもらえるかどうか」および「経歴に作品名クレジットを書けるかどうか」

引用元合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務などの一方的設定」(独禁法第2条第9項第5号八)をご覧ください。「一方的に当該フリーランスに対して合理的に必要な範囲を超えて秘密保持義務、競業避止義務又は専属義務を課す場合であって、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる」(引用元からの引用終わり)と明記されています。

こちらを照らしてみれば、作品が世にでるまでは販売開始時期など競合企業への思惑があるでしょうが、それ以後についてまで依頼先(受注側)を縛る必要はあるでしょうか。個人的には販売以後、世に作品情報がでてからは必要ないとして秘密保持義務や競業避止義務などの義務期間については細かく記載します。

なお、引用にも記載されていました通り、秘密保持義務に必要な期間以後も発注者側が依頼先(受注側)に秘密保持義務を強要するのは優越的地位濫用に該当すると考えます。

さらに作品販売時または公開時における作者クレジットについても「優越的地位濫用は独禁法上問題となり得る」という原則を考えれば、一方的な「クレジットなし」決定は問題となる可能性があります。

まずは「協議の場を設定する」ことが必要かと。クレジットなしなら対価反映で帳尻を合わせるなど考えておく必要があるのは、著作権放棄の話題が協議の場で出るときと同様です。

発注側が知的財産放棄を一方的に依頼先(受注側)に強制するのは独禁法上問題となりるという解釈と同じではと考えます。