本日、Xで「納品した後に、取引先から『先日お知らせした報酬額(単価)が間違っていたので値下げお願いします』という一斉メールが届いた」という投稿を見かけました。世間の荒波にもまれて生き残るにはこういうアクシデントを見逃すのではなく、「私ならどうする?あなたならどうする?」と自分のこととして考えることが大事です。
- まず、仕事着手時(契約を交わしたあと)に当事者の一方が他方に対して「一方的に値下げ、納期の繰り上がり、追加、修正」など通告するのは下請法(フリーランス新法)に違反する内容のはずです。たとえ、内容が本来望んでいたものと間違っていたとしてもすでに「契約書として明記してしまった」ならば、契約内容を一方的に破ることはできません。これが基本です。
- ですから、「間違った記載」で赤字になろうとも「間違った側」から一方的に「間違ってたからごめん。正しい額はこっち」と通告して終わりは無理でしょう。自分側のミスなのですから、それで赤字が出ようとも自分で補填するしかありません。ただし、ゼロを二つ間違えてたとか億単位の間違いになれば倒産にもなりかねない。そういうときには「お願い」する余地はあるかもしれません。その場合、一番多いのは「支払いを延期してもらうか分割」でしょうか。しかし、下請法(フリーランス新法)では「支払いは納品後60日以内に履行する」と定められています。ですから延期してもらって当然と思うのは言語道断。60日以内に「たとえば8割を振り込むのであとの2割をその後30日以内振り込む形」に延期してもらえるようにお願いするとか。これも延期が当然と思うなどあってはいけません。あくまでまず謝罪。平身低頭でなんとか支払いができる形を提示して部分的にも受け入れていただける可能性がないかお願いすることです。
- 反対に、こちらのミスでもないのに納品後に勝手に『間違ってたから値下げしてね、よろしく~』と言われたならば、言われた立場からすれば「知らんがな。それはそっちの落ち度」となりますね。ですから、基本は「その申し出は厳しいです」となります。しかし、その取引先とすごく懇意で今回に限っては大変そうだから「少し考えてあげてもいいかな」と思うならば、こちらから「妥協案を提示する」ことはできます。しかし、何度も申し上げる通り、原則「無理難題を言っているのは向こう」ですから。契約内容に従うのが筋なのだという点を相手にしっかり理解してどこまで譲歩するかを決めてください。
- なお、もし譲歩するならば、再度元の契約に関しての「修正契約」をあらたに作成するように勧めます。具体的に「どのような方法でいつまでに間違った分の差額を支払っていただくのか」を明記した契約書を作ることですね。
- さて、ここからはこのようなアクシデントに見舞われないため、または起こさないためには日ごろからどうしておけばよいかご提案です。 まず、契約内容は打診時(仕事着手前)までに8項目「分量、納期、報酬(報酬計算方法)、納品方法、納品場所……」などをしっかり話しあって、不明点がないようにしましょう。そして、『特に数字』に関しては、誤解や誤字脱字がないように発注する側ならダブルチェックしておきましょう。ここで一工夫。よく、受領確認メールが来ないという不満を聞くことがあります。
- 今回のようなアクシデントをなくすためにも、大事な数字項目は必ず『双方でオウム返し確認』をすることです。例。「11月15日までに○○分野の英日翻訳。単価は1ワード20円……」というならば、受けた側も再度「返信メールに、『この度はご依頼ありがとうございます。以下の条件で翻訳のご依頼を承りました。納期11月15日。単価1ワード20円……』など。
- こうやってオウム返し確認をすれば、こちらが勘違いして「単価2円」と入力したときも、相手から「1ワード単価2円ですか?」と聞かれれば「あ、間違いました」とわかるではないですか。こうやって具体的に「内容をオウム返し」しましょう。もちろん、他にも不明点があれば必ず聞き残しなく確認することです。「おかしいなあ。単価2円なんて聞いたことないけれど……と思いつつ、でも「2円はないよな。20円だろ」など勝手に妄想してはいけません。あれ?と思ったら「単価が2円とありますが、これで正しいでしょうか?ご確認ください」と手間を惜しんではいけません。こうすれば相手も「20円で入力していたはずだったのに、2円になってた」と気が付くでしょう。お互いに、誠意をもって「お互いに注意して」連絡ミスがないように心がけたいものです。
- 誤解が起こりそうな内容について『特に海外相手』での注意事項。1点目は「納期」です。どの国のどの時間帯に合わせるのか「必ず明記」しましょう。さらに、支払いに関して「どの国の通貨で支払うのか。さらに為替が絡むなら、何月何日時点の為替レートを採用するか」。ここまで気を使ってください。
元に戻って。もし、私が「契約内容にミスをしたなら」?原則、どんなに辛くても「その内容をがんばって履行」します。というかせざるを得ないです。それが法律であり相手との関係を崩さないことですから。でもどうしてもそれでは厳しいというなら?まずやることは「気が付いた時点ですぐに相手に謝罪する」ことです。まずはここ。言い訳などはあと。ましてや一方的に「まちがってたんだけど訂正よろしく~」みたいなノリで値下げ通告などありえません。謝罪の上、どういうふうにそのミスをカバーするか誠意をもって「相談」することです。お互いパートナー。誠意をもって、誤解なく自分にも相手にも不利な点が出ないように平等にwin-winになるように最善を尽くす。それでもトラブルがあった場合には最後は法律にしたがって動くしかありません。その最終案の前にできることはお互いすべきでしょう。これは業種問わず大事なことです。
ビジネスは人となり。ここを忘れないようにしたいものです。