2024年11月1日に施行される「フリーランス新法」について、昨年からいろいろな団体のセミナーに出て複数参加して勉強してきました。しかし、あと2週間余りで施行される時点に至ってもまだ納得いかない点がいくつか。今回はそのいくつかの疑問及び考えを書いておきます。
1.まず全体に言えることですが、定義や解釈であいまいな部分がまだ残されていると思います。最大の疑問が「労働者性を帯びている労働形態とフリーランスとの境界ラインが定かでない」です。平たく言えば「本来は労働者性がある働き方なのにフリーランス新法の範疇に押し込まれている可能性がないか」と懸念しています。
すでに、この問題はここ数年アマゾン配達員やUber配達員の働き方が「契約では自営業者で委託契約」とされているものの「一社に専従でしかも裁量権なく働いているのだから実態は労働者ではないか」という議論が沸き起こり、両方でユニオンが結成されました。こういう視点でこの新法を見ると、当該問題は解決されるどころかあいまいさが増えている実感があります。
労働者性を帯びている働き方は被雇用者として労基法など労働諸法で考えるべきと判断します。
2.1に関連して、業務委託期間が1か月とか6か月という記載もピンときません。育児休暇や出産休暇の申請を考慮してという意味で期間が出てきたとも考えられますが、反対に「6か月以上委託契約を続けると休暇を考慮しないといけないなら、6か月前でいったん契約を切る」というような姑息な方法を考える親企業がないとも言い切れないと思うのですが。このあたりもフリーランスの委託期間に関わらず、育児休暇も出産休暇も考慮するという考えで、労働者性があるか否かで判断していただきたいです。
3.親企業に対してフリーランスが対等に交渉できるよう、スタート段階での不平等関係をなるべくなくすため(優越的関係を生じさせないため)、法律がフリーランスを守るべきと考えます。しかし新法では、フリーランスに対して違反行為があった場合も、厳しい罰則規定はないように見えます。まず公正取引委員会に申告。そこから当局が調査に入り実態を確認して当該発注先に指導注意。それでも何ら変化がない場合にやっと罰金という形のように見えますが。ここまで道のりの長いことが問題では。もしフリーランスの立場で申告すれば発注側は公取に相談申告したのは誰かがすぐにわかってしまうかもしれません。そのリスクを考えて通報者の安全と今後のビジネスの持続性を保証しつつ通報申告できる形を実施しない限り、この相談申告制度も絵に描いた餅になるかもしれません。実際、行政指導に対して長期の営業停止でもない限り何も影響ないと豪語する企業もあると聞いています。申告した後の実態調査と行政指導にあたる当局監督官の数を増やして権限を強化していただくことが大事だと考えます。
4.発注側の理不尽な対応について個人で交渉して闘うのはかなり大変です。私個人は大変と予測される仕事の場合、弁護士さんに契約書から仕事終わりまで相談に乗っていただいてきましたが。フリーランス同士が連帯できる形=ユニオンのような形を政府自らが提示するインセンティブを作っていただきたいと願います。ここでひとつ。通常、フリーランス同士がたとえば報酬について横同士で相談することをカルテルと受け止める発注側があると聞きましたが、それはまったく筋違いという話を昨年、日本労働弁護団弁護士さんのお話で知りました。こちらの動画をご参照。フリーランス同士の連帯運動は労働者がつくる労働組合と同じ意味を持つということで、政府および公正取引委員会には新法の実効性を高めるためにフリーランス同士の連帯インセンティブを考えていただきたいものです。同時に、3でも書いたように、下請法でも発注側企業に罰則はたいしたことないと居直っているところがあると聞きましたので、違反した発注側への厳しい罰則など違反企業を出さないための実効策をさらに検討願いたいです。
以上、つらつらと今感じたことをまとめました。これからも新法の動きは折に触れてみていきます。