AI翻訳・機械言語処理を使った翻訳について知っておいていただきたいこと

ここ数年、AI翻訳という言葉が新聞雑誌でもよく見かけられるようになりました。個人ベースでもAI翻訳器機などが売り出されています。仕事ベースでも毎日のようにAIを使ったデバイスやプランが広告に出てきます。しかし、「使える」「すごい」という言葉だけが先走りして実態があまり理解されていないように感じます。

ということで、今回は「AI翻訳・機械言語処理を使った翻訳を依頼するときに知っておいてきただきたいこと」と題して少しお話しします。

【知っておいていただきたいこと】

1.「安い」という謳い文句に惑わされないことです。たいてい「安い」の裏には「安い理由」が潜んでいるものです。安物買いの銭失いにならないようにしてください。

2.なぜ安くすむのかをしっかり聞いてください。言語処理そのままの結果(当業界では「ライトエディット」と言います)では使えないことがほとんどです。そもそも、機械言語処理の用途目的は「自分専用」であり、ビジネスで他者に読ませるためではありません。ざっと流し読みで概観を得るためと言えましょう。また、誤訳をご自分で発見できるだけの能力をお持ちの方用です。この用途外で使いたいなら、言語処理の後「人間によるチェック」(当業界では「フルエディット」と言います)が必要です。

ここで選択しなければいけない問題があります。このチェック作業を誰がやるのか。つまり①御社内でやっていただくのか、それとも②翻訳会社側でやっていただくのか、です。

①の場合、チェック作業に当たる人材が社内で確保できているのかどうかをまず確認してください。このチェック作業は想像以上にきつい作業です。人員数および能力を備えた人材でないと対応できないことが多いです。上記チェック作業に対応できる人材が社内にいるかどうか準備しておいてください。もし、そういう人材はいない場合は少なくとも機械言語処理翻訳で依頼しないほうが良いです。なぜなら、言語処理後の工程に厖大な手間と時間がかかるからです。

②翻訳会社側にチェック作業もやっていただいて「人間翻訳レベルに近い形」をご希望の場合、①で述べましたようにこのチェック作業に膨大な時間と手間が必要です。ということは、その分の費用が追加されることになります。この点について事前に翻訳会社側から正しい説明を受けてください。説明がない場合は御社側から必ず確認してください。

3.翻訳会社にチェック作業も含めて依頼するなら、専門用語ファイルや参考資料なども原稿と一緒にお渡しするとチェック作業がスムーズに進みます。専門用語ファイルを社内で作っている場合、メンテナンスで最新状態になっていますか。必ず、納品結果を社内で確認して専門用語ファイルを更新しておくようにお勧めします。

以上を考慮しますと、AI翻訳・言語処理でも現状は「人間によるチェック」が入らないと実質使えないことがほとんどですので、本当に「安い、早い、しかも高品質」がなしえるのかどうか冷静に考えてください。品質的にも最初から「人間翻訳」で発注なさるほうが最初から最後まで品質優先で社内での懸念材料がなく発注できると考えます。

百歩譲ってどうしても予算がないという場合、どこに誤訳が潜んでいるか分からない言語処理の山を納品されてもお困りになると拝察いたします。その場合、どの部分に重点を置くかを事前によく考慮してください。あれもこれもではなく、10文書訳してほしいけれど重点的にこの2文書に絞っておこうなど。ただし、この場合も一つの文書の中でこの段落と飛ばして後半の段落というような形は無理です。というのは、文章とは最初から最後まで論旨の流れが計算されて書かれているからです。「飛び地」翻訳を依頼すると論旨をご理解しにくくなります。必ず、文書は切らずにご依頼なさってください。

【まとめ】言語処理が「安い」なら理由があります。質の担保はありません。そのデメリットを御社内で引き受けられるかどうか多方面からお考え下さい。上記情報が少しでもお役にたてますように願っております。